ほっこり

受けとめる

大阪に行く新幹線でのこと。車両の一番前の席に、若いパパとママ、3歳位の可愛い女の子が座っていた。可愛いおしゃべりがよく聞こえ、思わず耳がそちらを向いていた。

そのうち彼女の機嫌が崩れてきた。長旅だもの、無理もない。女の子がぐずる度に、周りを気遣ってデッキに連れ出すパパ。叱ったりはしない。とても忍耐強い。

その内、「おうちにかえりたい!」と言い出した。それが「はやくおうちにかえりたい!」「いつものおうちにかえりたい!!」のエンドレスの叫びになった。何とか目先の変化でごまかそうとするパパは大汗だ。"他の乗客に迷惑かけちゃう!静かにさせなきゃ!"

抱っこでデッキに連れ出しても、腕からスルリと抜け、車両中に響く声で叫び続けながら座席にもどる女の子。2度ほど繰り返したあと、そこまで悠然と座っていたママがようやく女の子に手を伸ばした

女の子をふわっと膝にのせ、それまでの連続叫びや、パパの大汗の顛末など見ていなかった位のお〜っとりした声で、「どうしたの?」「はやくいつものおうちにかえりたいの!」「そうか、お家に帰りたいのね。どうして帰りたいの?」「もう◯◯ちゃん、いやになっちゃったの!」「そうか、嫌になっちゃったんだ。」「おうちにかえれる?」「帰れるよ。」「どうやったらかえれる?」「次に電車が止まったら、お家に行く電車に乗り換えて帰れるわよ。」「いつとまるの?」「あと少しで停まるよ。それまで少しお目々をつぶってようか?」「あとすこし?」

言っている間に女の子の声は聞こえなくなった。

周りを気遣うあまり、女の子の気持ちに寄り添えなかった優しいパパと、大騒ぎを責めることなく、静かに彼女に寄り添って、その気持ちを受けとめたママ。

ママに気持ちを聞いてもらえた女の子は安心したのか、のぞみが名古屋、京都と停まっても起きることなく、新大阪に着いても、微動だにせずにママの横で寝入っていた。

ただ聞いてもらうだけで気持ちが大きく安らぐこと、気持ちを受けとめてもらうことの大切さを、小さな女の子にライブで教えてもらった。ありがとう。

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