日々のこと

失せ物

夏休みが終わった。家族と存分にまみれたあと、戻れる場はありがたい。会いたい仲間がいる幸せ。

しかし、実はこの休み中、私の中にはずっと気になっていることがあった。

ノートとペンケース、私の仕事のスケジュールの要が、ない。スマホには大体のことしか入れていない。

休みの初日の荷造り中にノートがないことを自覚した。部屋中を探し回るが見つからない。

わかった、会社に置いてきたんだ!歯医者さんに行く前に、会社に寄って探せばいいや。

歯医者-駅 を 会社-歯医者-駅 に変更し、トランクを引いて会社に寄った。歯医者の時間は迫っている。大汗をかきながら机の周りやあちこちを探すが、見つからなかった。歯医者さんではノートなしで次の予約日を決めた。

歯医者の後は新幹線だが、豊橋に停まるひかりは2時間に一本。帰省ラッシュの予約変更はとても難しい。もう一度会社に戻る時間はなく、そのまま駅へ向かった。

頭のどこかに気がかりを抱えたままの休みが終わり、帰宅後、荷物を解く前にもう一度家の中を探した。まさかの食器棚まで。なかった。でもまだ会社の2階がある。隅々までまだ見ていない気がして、期待を残す。

久しぶりの会社。最後の砦の2階へ上がった。あちこち開けたり閉めたりしたが、ない。ようやくみんなに聞いた。

「えーっ?ないと困るよねぇ。」「どんなノート?」「何色だった?」「いつ気がついたの?」などなど。

さすが、いつもこのおっちょこちょいを相手にしていてくださる皆さま。またやったの?となじることなく「私もね、公衆電話でノート開いて話をして、そのまま出て来て…」失敗談の数々まで添えて、面倒くさがることなく、あたたかく、心を寄せて心配してくれる。本当にありがたい。

いよいよ身の回りにはないと諦め、立ち回り先を潰して決着をつけるべく電話をかけた。

持って行った自覚もなく、バッグから取り出した記憶もない、お寺、切符売り場、デパートのお菓子売り場、食事場所やカフェにも。

どの電話にも共通した、新鮮な体験をした。どこの「お忘れ物係」もとても親切で、丁寧だった。当日だけでなく、次の日の忘れ物まで調べたうえで「残念ですがこちらでは該当の物はお預かりしていませんでした。見つかるとよろしいですね。」と、とてもこちらの気持ちに添ってもらえる応対だった。紋切り型の愛想のない対応は1件もなく、救われた気がした。昔とは違う。電話応対の向上は素晴らしい!

極め付けは、昼日中にお墓まで見に行ってくださったご住職、ありがとうございましたm(_ _)m

夕方、出来上がった書類を書類箱に片付けようとフタ代わりのスケジュール表をどけた途端、黒い革表紙の見慣れた物が見えた。「アッ!!」思わずもう一度フタをした。

「ちょっと、お姉さん!」と叫んだらしい。後はみんなで大笑い。

見つかってよかった〜。休み明け初日から、大変お騒がせしました。陳謝。そして感謝です。

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